門野博元判事『刑事裁判は生きている』のうち供述心理鑑定について

大崎事件再審請求審の動き

刑事再審について熱い文献、論文を継続的に出されている門野博(かどの ひろし)元東京高裁部総括判事の新刊が出ました。その名も刑事裁判は生きているです!この本は、非常に素晴らしい本で、刑事裁判に深い知識のない管理人も、すごくわかりやすく読めましたよ。刑事裁判の事実認定適正化の歴史、現在地、過去の誤った裁判のやり直しである刑事再審について、最前線の知識がちりばめられています。少し大部ですが、関心があるところから読んでいくととても面白くかみくだいて理解できます。いろいろな著名再審事件がとりあげられています。この本については、改めて記事にしたいところですが、今日は供述心理学について先駆的な議論を遂げた大崎事件の部分について私なりの考察を加えます。  

*門野元判事は、裁判長として、再審無罪となった有名な布川事件の再審請求即時抗告審の裁判長として、再審開始を維持しました。立派な先生です。

門野元先生は,表記の書籍で,大崎事件の最高裁決定(大崎事件の小池決定)と大崎事件の心理学鑑定について言及され,小池決定は,「心理学鑑定を証拠とすることに否定的だった控訴審(正しくは,即時抗告決定です〔根本決定〕)の判断を支持した」と分析されました(102頁。310頁)。

ただ、大崎事件を支援する立場からいえば、大崎事件弁護団は,そうではなく,「根本決定は,大橋・高木鑑定の証拠能力を否定したが,小池決定は,証拠能力は認め,証明力が限定的であると判断した。つまり,最高裁は,大橋・高木鑑定の証拠能力を認めたのである」と説いてこられていることがよくわかっています。報道によれば、

大崎事件の第4次再審請求審(鹿児島地裁・中田幹人裁判長 において、審理中で、それほど遠くない時期に決定が出される見込み)で,検察官は,稲葉鑑定はもとより,大橋・高木鑑定についても,もはや証拠能力を争うことをしなかったといわれています。

確かに、ここは外部からみていてわかりにくいところですし、理解が難しいところではあります。私も最初意味がよくわからなかったのですが、小池決定をきちんと読めば、大橋・高木先生の鑑定(スキーマアプローチ)の証拠能力を最高裁第1小法廷は認めて、前提にしていることがわかります。

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