湖東事件(刑事再審無罪)に対する鴨志田祐美弁護士の見方

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この判決は、令和2年3月31日、大津地方裁判所で宣告され、確定しました。このとき、鴨志田弁護士は、湖東事件の弁護人としての立場ではなかったのですが、わざわざ鹿児島県から裁判所門前まで出張して、西山さんの無罪を見届けました。その際の鴨志田弁護士の識者の見方です(初出 京都新聞令和2年4月1日刊)

【識者の見方】

自白の任意性判断の指標示した

自白の信用性を緻密に検討した上で、任意性を否定して証拠排除した点は高く評価できる。任意性判断については、人権侵害の有無や程度、捜査の不当性などから総合的に判断するメルクマールを示してみせた。類似の事案で将来の規範となるような判決にしたいという裁判所の強いメッセージを感じた。先の地平を見据えており、他の再審だけでなく、刑事司法全体の一里塚になり得る。この冤罪の教訓を生かさないといけない。

自白の任意性の否定は冤罪被害者にとって大きい。苦しんで自白をさせられたのに、任意性が認められてしまうと、自ら進んでうその自白をしたことになり、耐えがたいほど尊厳を害する。再審無罪が確定した足利事件でも任意性は否定されておらず、今回の判決は大きい出来事で、西山さんの名誉がやっと回復したと言える。

取調べの特殊な人間関係に目を向けたところも判決の功績だろう。人は支配・服従というあらがえない関係の中で簡単にうそをついてしまう。取調官との相互作用の中で供述が紡ぎ出されていくところにスポットライトを当てたことは重要だ。

今回の判決は、こうして取られた自白に偏重し、障害などで配慮が必要な「供述調書」から自白を搾り取って事故を事件に仕立て上げていくような捜査や公判に警鐘を鳴らしている。

裁判所による謝罪はなかったようだが、大西直樹裁判長の説諭には裁判所自身への自戒の念もあったのではないか。だからこそ、裁判所だけでなく刑事司法に関わる警察や検察、弁護人は、さまざまな再審制度の問題に向かわないといけない。ともすると、血の気がないことが美徳とされる裁判官だが、メッセージを精一杯伝えている血の通った判決だと感じた。

アイキャッチ画像は、「白黒つけるぜっ」(哀川翔主演)のゼブラーマンならぬ、彦根城お堀のパンダ柄鴨です(品種名 キンクロハジロです)

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