日野町事件第二次再審請求即時抗告審は、本当に盤石か

大崎事件再審請求審の動き

即時抗告審で、日野町事件の弁護団は3年余りも時間を与えられてきた。あくまで記録を見ておらず、以下は、公刊されている決定書(判例時報等)、文献からの個人的見解である。

その間、まず最も優先度が高かったのは、C3(判例時報上の仮名)の供述心理鑑定であったのではないだろうかと思う。それも、かつて、一度も裁判所に新証拠と認められたことのないH教授の供述心理鑑定ではなく、最高裁R1.6.25第一小法廷決定(小池裕裁判長)・裁判集刑事326号1頁が証明力を認めているスキーマアプローチの手法により、阪原さんのアリバイを確固たるものにすることだったのではないか(大津地裁決定では、アリバイが虚偽ではなかった可能性、まで行ったに過ぎないと理解している)。確定判決では、アリバイ主張が虚偽とまで言われているが、私は、里見繁教授がいうとおりで、「消えたアリバイ」は真のアリバイだったと思っている。もし、新証拠で、これを確固たるものにすれば無罪しかないのではないだろうか?

あとは、少し重要度は下がるが、第2次の大津地裁決定においても供述の信用性が揺らがなかったC1(判例時報上の仮名)の供述変遷に、捜査官の誘導が現れている点の検討も考えられる。素人考えなので、間違っているかもしれないが・・・

注意すべきなのは、第1次の大津地裁決定(木谷明『刑事事実認定の理想と現実』法律文化社(2009)19頁)の筋であれば、簡単に請求棄却決定を書くことができることである。この決定を書いた長井秀典裁判長だけが特異なわけではないと思われる。自白と矛盾する客観的状況を追加で指摘しても、「知的能力のせい、時間の経過のせい、核心部分ではない」、のどれか又はその全部により、すべて排斥できる。また、金庫発見場所への写真の入れ替えについても、決定的に無罪を示すものではないことは明らかで、写真の入れ替えは相当ではなかったが、案内自体は自力でできていたことに「疑いを入れない」とされてしまう可能性は十分にあるだろう。

飯塚事件の再審請求棄却方向の最高裁決定(最高裁R3.4.21第一小法廷決定、小池裕裁判長)は、三行半ではなく、わざわざ理由を書き、「新証拠の立証命題と関連しない旧証拠の証明力に関する弁護人の主張について明示的に判断していないことに誤りがないとした原決定の判断は、正当なものとして是認できる」,「犯人と事件本人のMCT118型鑑定が一致したことを除いたその余の状況事実を総合した場合であっても、事件本人が犯人であることについて合理的な疑いを超えた高度の立証がされており、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原決定の判断は相当である」としている。しかも、この決定は、最高裁判所刑事判例集に掲載されるというから(刑集75巻4号)、調査官解説も世に出ることになる。個人的な感想にとどまるが、1点目として、飯塚事件については、絶対に再審を開始するなと言う下級審裁判官に対するメッセージであり、2点目として、開始方向の決定に対して検察官がした即時抗告審が係属している日野町事件については、第1次再審請求の大津地裁決定の筋で(自白と客観証拠との矛盾については、元被告人の記憶の減退や知的能力等により説明が可能であり、金庫発見場所への引き当てについては、写真の入れ替え自体は相当ではないものの、元被告人が自発的に案内できたという点には疑問を入れない)、原決定取消しの決定を理論的にも心理的にも書きやすくなったことは間違いないのではないかと心配している。

当地、かごんまから遠く離れた事件であるが、知れば知るほど、早期に、そして必ずや救済されなければいけない冤罪事件ではないか。

外から見ると、弁護団は、危機感が欠如しているように感じるし、やるべき情勢の分析・把握がきちんとできているのか不安に思った。ただ、弁護団が、2021年9月15日にオンラインで報告集会を開催すると知ったので申し込んだ。これを見た上での感想はまた別に後日アップしたい。

そして、個別の事件の対応と併せて、法改正についても力を入れなければならないのではないか。主に、検察に特別抗告をさせないためである。少なくとも、再審法改正について一定の世論が形成され、検察が特別抗告を躊躇するような状況にするのが理想だと思うのだ。

とにもかくにも、弁護団の奮起を期待したい。この弁護団は、他の再審事件の弁護団と比較しても、動きが悪いように見える。本当に、本当に頑張って、結果を出してほしい。心から応援している。

鹿児島は秋の気配。

おやっとさぁ。また来っでな。

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