日野町事件集会の情報などを併せると、今、課題となっている点や、今後を考える上で考慮すべき事情は、外部から見る限りでは次のとおりとなりましょうか(個人的意見)
【今後を考える上で考慮すべき事情】
事件を担当する石川恭司裁判長の定年退官予定は、2025.11.23(つまり、任期途中で依願退官される、あるいは、
異動されることがなければ、裁判長の交代はなさそう)
左右陪席裁判官は、途中で交代の可能性あり
なるべく判断を急いだほうが良い側の事情
・飯塚事件の最高裁調査官解説が世に出る前に、判断を仰いだほうがよい(その理由は、飯塚事件の小池決定について、過去記事で書いています)
一言でいえば、この最高裁決定は、総合考慮型の再審請求事件について、ハードルを高く設定する決定と理解できるため。調査官解説で、この論調を強く打ち出してくることが予想できる(この理由はまた別にこのブログに書きますのでご一読ください)
・左右陪席裁判官の心証が、開始方向であれば。
なるべく判断を遅らせたほうが良い側の事情
・合議体の心証が、地裁決定取り消しの方向と洞察できる場合
検討すべき事情
石原山の金庫発見現場への検証に前向きな合議体が現れた場合、その検証をした合議体に必ず決定を書いてもらうべき(写真では十分イメージできない危険が高い。実際に行ってみれば、このルートはあり得ないことがはっきりわかる)

【課題点】
自白の信用性については、第1次の長井決定の論理で、いかようにも理屈をつけられてしまう危険があります(その1の記事参照)。死因と死亡時期が新証拠で立証成功すれば、殺害自体があり得なくなる大崎事件と異なり、日野町事件では、真犯人が強盗殺人を犯したこと自体に間違いがないからです。その意味で、即時抗告審で弁護団が取り組んだ死斑の問題や、胃の内容物の問題は、残念ながら決め手とはなり得ません。すなわち、前記長井決定のように、「阪原さんの知的能力、時間の経過等により記憶があいまいになった」と説明されてしまう可能性がどうしても残ります。
これは残念ながら、死体遺棄現場の案内や、鏡の指紋等についても同様です。
今改めて考えてみると、間接事実として確定1審、控訴審判決が重視した金庫発見現場への案内の点を粉砕することが再審開始決定維持のベストの早道です。浜田寿美男先生の鑑定意見書に立ち返り、阪原さんが、自発的に、誰からもヒントを得ることなく、金庫発見現場を案内したという確定判決の核の部分をあらためて破壊する必要があるのです。
この方法としては、たとえば、テキストマイニング等で遠隔操作事件で実績のある中根先生(オーストラリア大学)や、スキーマアプローチ等で実績のある大橋、高木先生などに改めて鑑定をお願いする方法もあるでしょう。しかし、もっと簡明な方法があり、裁判体に刑事訴訟法上の検証として、石原山の、ふくもと林檎梨園からのルート及び、あぜ道から山中を通るルートを、実際に踏破してもらうことが最善ではないでしょうか。
管理人が、この問題を詳しく知ったのは、浜田先生の下記著書『虚偽自白を読み解く』を読んでからです。非常にわかりやすく、納得のできる内容でしたので、この事件に関心のある方は、是非ご一読されることをお勧めいたします。
浜田先生の本はこちらから↓
管理人は、判例時報の大津地裁決定をよく読みました。それによれば、確定判決は、O検察官は、阪原さんが、近くまで車でいける福本りんご梨園からのルートではなく、あぜ道や山の斜面を縦走しなければならないルートを供述したとき、「本当にそのルートで行けるのか」と疑問を持っていたところ、金庫引き当たりに同行し、実際にその場所にたどり着いたために「有罪を確信した」とされています。これを踏まえて、確定判決では、警察官らが誘導しようとするなら、断片的な情報提供や、下草の刈り揃えなどではなく、はっきりと場所を指示すればよいだけのことで、いかにも手ぬるいと書いています。まさに有罪前提の事件の見方をしたといえるのではないでしょうか。これに対して、大津地裁の再審開始決定は、「そのような明確な誘導をすれば、将来に捜査上の禍根を残すことは明らかで」、「金庫発見場所を案内させたい警察官と、任意性を欠く厳しい取り調べで強盗殺人の罪を被る決意をしていた(実際は、犯人ではない)阪原さんの無意識的な協調作用が働いた可能性が合理的にみれば、ある」といえるに至った、としています。みなさんは、どちらの評価が、疑わしいときは被告人の利益に の原則にかなっていると思われるでしょうか?
同じ、阪原さんの案内について、確定判決(坪井祐子裁判官)、O検察官と、大津地裁再審開始決定とではまったく違う見方をしていることになります。
写真の入れ替えをネガで証明するだけでは、当然に再審開始にならず、検察側の、「自分で案内したことは間違いない」、うまく撮影されていない可能性もあるから帰り道でも撮影したけど、行きの案内は間違いない、という理屈が立つのかどうか、そこをちゃんを裁判官に見てもらい、それを写真や地図ではなく、実際に現場に望んだ3人に決定を書いてもらえるよう望んでいます。
おやっとさぁ。また来っでな。(薩摩弁 お疲れ様、またUPするからね!)
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