大崎第3次で再審開始を取り消して請求棄却の自判をした第1小法廷のまったくおなじ裁判官構成(裁判長裁判官小池裕、裁判官池上政幸、木澤克之、山口厚、深山卓也、敬称略)で、飯塚事件再審請求審の請求人側特別抗告を棄却しました。この決定を読みましたが、非常に日野町事件に与える悪影響が大きいと懸念しています。あえて、三行半にせずに、理由らしきものを付しているのは、1つは、先にした大崎事件の小池決定を正当化する動機、2つには、死刑執行された再審である飯塚事件については決して再審を開始しないという意思表明があると思い、非常に心配しています。
・再審請求審では犯人性に関する最判H22.4.27は適用したくない
・間接事実型で、柱となる間接事実が抜けても、ほかの薄い間接事実の重層構造で「高度の立証」がされている
とメッセージ性のある波及効を狙ったような構成であり、
・科学の発展により再検討を要するにもかかわらず、当時の血液、尿鑑定をいかにも科学的らしいものとして掲げていることなど、
大きな不安を感じました。
この事件は、日本弁護士連合会の支援事件に入っていません。その点には賛否があるとは思いますが、ある意味では、日本の刑事司法の闇の深さが凝縮した事件だと思います。↓の本が、読みやすく、わかりやすいです。是非多くの方にこの事件も知ってほしいです。
しかも、この飯塚事件の小池決定(最高裁判所令和3年4月21日第1小法廷決定)は、最高裁刑事判例集(通称、刑集)に掲載されることとなっています。野村賢最高裁調査官が調査官解説を書くことになりますし、下級審に与えるインパクトは絶大となります(刑集75巻4号)。やはり、最高裁の強い意向表明であると感じてしまうのは、管理人だけなのでしょうか?
飯塚事件では、旧証拠を動揺させる(信用性を低下)証拠は多数あるし、消極方向(犯人性に疑いを入れる方向)の事情が相当数あることは、即時抗告審の判例時報解説(2396号80頁)でも明言されています。(そして、福岡高裁決定は、これらについて、他の解釈を入れる余地があるとしてことごとく排斥しているのです。)であるにもかかわらず、
小池決定(飯塚事件)は、三行半ではなく、わざわざ理由を書き、
「新証拠の立証命題と関連しない旧証拠の証明力に関する弁護人の主張について明示的に判断していないことに誤りがないとした原決定の判断は、正当なものとして是認できる」
「犯人と事件本人のMCT118型鑑定が一致したことを除いたその余の状況事実を総合した場合であっても、事件本人が犯人であることについて合理的な疑いを超えた高度の立証がされており、新証拠はいずれも確定判決の認定に合理的な疑いを生じさせるものではないという原決定の判断は相当である」としています。
さしあたり、飯塚事件については、絶対に再審を開始するなと言う下級審裁判官に対するメッセージであり、開始方向で検察官がした即時抗告審が係属している日野町事件については、
第1次再審請求の大津地裁決定の筋で(自白と客観証拠との矛盾については、元被告人の記憶の減退や知的能力により説明が可能であり、金庫発見場所への引き当てについては、写真の入れ替え自体は相当ではないものの、元被告人が自発的に案内できたという点には疑問を入れない)、原決定取消しの決定を書きやすくなったことは間違いないでしょう。
おやっとさぁ。またくっでな。
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