昨年の袴田事件第2次再審請求審の最高裁第3小法廷の差戻決定以来、決定等の形で成果は出ていませんでしたが、著名事件のいくつかについては着実に進行しています。
まず、東京高裁に係属中の袴田事件の差戻後即時抗告審(大善文男裁判長)です。弁護団が実施したみそ漬け実験が合理的な内容で、2月に検察側が反論を検討するという展開になりました。その後、直ちに決定に向かうかは未知数ですが、希望の光が拡がる展開となっています。個人的な意見ですが、袴田事件では、静岡地裁の再審開始決定の際、村山浩明裁判長が巌さんの拘置の停止(釈放を意味します)を決断されました。どうしても再審請求事件は再審開始可否にばかり目が行ってしまいますが、確定死刑冤罪事件において、この英断は、極めて大きな意味を持ちます。もっと大きく賞賛されてよい判断だと思います。
次に、名古屋高裁に係属中の名張事件も、決定時期が取りざたされるようになってきました。封緘用の糊の鑑定結果は説得的なものだと思われます。現在の担当裁判長は、三者協議等に積極的であった鹿野伸二裁判長です。平野母子殺害放火事件(間接事実積み上げ型における犯人性の推認)の担当調査官であり、評判のよくない名古屋高裁の歴代裁判長の中では、恵まれた裁判長を引いています。再審請求事件は、担当裁判体の構成が非常に重要であり、もし決定に熟しているのであれば、期待できる裁判体に決定起案を決断してもらうのがよいのかもしれません。弁護団の検討を祈りたいです。
そして、鹿児島県の大崎事件です。こちらは、2022年1月28日に、弁護団、検察官が最終意見書を提出する期限が設定されています。外野からなのでわかりませんが、こちらも裁判体(中田幹人裁判長)がどのようなスケジュール感を持っているのか、既に決定作成の工程に入っているのか、原口アヤ子さんがご高齢であるだけに、注目されます。個人的な希望としては、既に決定の評議等に着手していただいており、最終意見書が出るまでにある程度の工程を進めてもらえれば一番ありがたいと思います。決定時期については、早ければ、年度内、遅ければ夏期休廷明けの9月、普通の進捗なら6月、う~んでも9月はやっぱり先過ぎるので、3~6月(15日は原口さんの誕生日)でお願いしたいところです。
そして、最後に、日野町事件第二次請求即時抗告審(石川恭司裁判長、大阪高裁)にも注目したいところです。報道によれば、検察側では新たな主張や証拠の提出はしないとのこと。今どんな状況かはわかりませんが、私が弁護団であれば、決定をする裁判体に現地見分をしてもらえるように提案したいところです。特に、石原山の金庫投棄現場へ、通常の車でそばまで行けるルートと、阪原さんが引き当たり捜査で案内したルートの両方を踏破してもらえれば、開始決定維持方向は盤石でしょう。
気がかりなのは、裁判所の異動時期が迫ってきていることでしょうか。やはり、決定を書く方針の裁判体に行ってもらうことが重要で、メディアの力もお借りして、盛り上げていくことが重要でしょう。
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