今井輝幸判事(日野町事件再審開始決定の裁判長。現大阪高裁判事)による「再審公判の審理」は、同判事が湖東記念病院事件の再審公判にも加わった経験を踏まえ、学理・実務を問わず踏み込んだ研究の少ない再審公判について、覆審説、続審説のそれぞれに立った場合における審理方式やあるべき訴訟指揮について、極めて実践的に論じるもので、今後の実務の指針となるであろう論攷です。そして、再審弁護人や冤罪被害者が再審公判に求める「誤判原因究明機能」について、脚注で「再審による無罪の判決は、とくにそれが重大な事件に関するものであるときは、刑事司法の運用に関する痛切な警告となり得る。誤判の原因を究明し、運用の改善……を通じて再発の防止に努めることが必要である」という松尾浩也教授の論説を引用し、誤判原因究明機能をもたせることの意義を認めています。 なお、この特集の冒頭には、加藤克佳教授による「刑事再審をめぐる問題状況」と題する、再審に関する問題全般にわたって概観し、さらに法改正の必要性にまで踏み込む、14頁にわたる力作が掲載されています。 そして・・・、もう一人の執筆者である小西秀宣弁護士(元東京高裁判事)は、かつて、新証拠の明白性の判断基準についてバリバリの限定的再評価説(新証拠の明白性判断に際し、その新証拠と立証命題を共通する旧証拠に限定して再評価すべき、という考え方)を取っている論者でしたが、この号に掲載された「再審開始の要件―証拠の明白性について―」と題する論攷で、新証拠の証明力を判断するにあたって、確定判決の証拠構造を分析することを前提に、旧証拠と重要な関連性を持たない証拠の検討や再評価を「してはならないというのは非現実的」と、かつての自説からリベラルな方向へと改宗されつつあります。 司法制度に携わる方、一般の方を問わず、ぜひお読みいただきたい特集です(^O^)v
引用元;鴨志田祐美弁護士執筆のアマゾンレビュー
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